俳句・短歌 平成18年の作品

薫藤園ご利用者・ご家族、職員の俳句・短歌作品です。(順不同・敬称略)

平成18年秋~冬の作品

栄えゆく薫藤園の空鳥渡る
全山の紅葉に染まる旅衣

吉田きみ

百段の磴に箒目淑気満つ
銀の斧沈みゐるかに冬泉
高からぬ庭木に集ひ寒雀

柴崎加代子

とどろける鎮守の太鼓年明くる
書初や真一文字に口結び
一番星大きく上げて冬夕焼

今成公江

白神の森落葉一枚世界遺産

川邉義雄

心いやされしマンドリン演奏年の瀬に
初孫の寒さ忘れし笑顔かな

若旅清子

山茶花やピンクに染めし散歩道
群となり肥ゆる小鳥や冬木立
あれこれと行ったり来たりの年の暮

小林芳雄

遠く住む子等が浮かびぬ冬の雲
さくら葉の黄に深まりゆく日和かな
襟巻きし元気に来園デイの姥

野村節子

秋惜しむ伏目がちなる六地蔵
水仙や日のあたりたる句会席
手を握り姉とスキップ小春空

掛谷弘史

木目込みの干支の亥作り励む友
 幸福そうに動く両の手

さびしさをおさえ笑顔で語り合う
 恋しきものは青春の日々

吉田きみ

秋風にこがねの稲穂波たちて
 凛とそびえし吾が住む園は

中庭にルビーのトマトピカピカと
 生きがい楽し薫藤園

町田たけ子

リハビリの体操終えて車いす
 連ねてゆくを見守る寮母

平山富治

おはようと朝から交わす挨拶に
 元気もらってがんばる私

中畑みどり

ありがとうささいなことで感謝され
 やる気をもらう特養棟

大塚洋子

輝ける朝日を浴びに散歩する
 車椅子押す親子は美し

川邉義雄

雨の日は雄々しき人に
 配食作る楽しみ心がはずむ

須田明美

朝もやの消えゆく様はいと悲し
 我を忘れた母に重ねて

島村静江

デイサービス入所便りの届けありて
 我れは介護に心くだきぬ

古山清美

人の身を人が見る園あたたかき
 笑顔の感謝に今日も癒さる

小林芳雄

生まれつき心臓悪しき孫なりき
 今日女子医大にて手術成功

野村節子

平成18年夏の作品

高原の駅に降り立ち秋の声
ギター弾く父を囲みて夏暖炉
白樺の木肌に触れて夏惜しむ

柴崎加代子

芒穂や琴の音響き誕生会

町田たけ子

田草取り午後の田んぼに腰のばす
むさしの野ふとりし稲穂空さして

長森きみ

またひとつとしを重ねて敬老日
しみじみと名月あおぐホームかな
夜すすぎは寮母同志のあせのもの

吉田きみ

盆過ぎて母との思ひ出善光寺
広々とマンションの部屋草津の秋

田口喜久子

盆燈籠下げて呼びけり母の魂
赤とんぼ黄金の波を泳ぎゆく

清水和江

避暑に来て師を思ひ出す草津かな
湯畑の夏の終わりの人出かな

若旅清子

蝉しぐれ耳をふさぎて通りけり
鈴虫の鈴の音色に集ひけり

桐谷ふじ子

連れ立ちて賑わふ旅の夏の空
水の玉揺るる蓮葉に遊ぶかな

古山清美

吾が生まれし里は利根もて星月夜
志賀草津高原ルート夏涼し
草津まで行く路咲けりをみなへし

野村節子

十までは数へし畑の西瓜かな
思はざる方に揚がりし遠花火
秋澄むや親しきものに遠筑波

今成公江

ひっそりと根元に黄花茗荷かな
音響き探す夜空に遠花火
芒の穂風に光にたはむるる

小林芳雄

鈴虫は羽根三振りの得意顔
夜もすがら寝むけ醒まされ鈴虫に
鈴虫の籠いっぱいのオーケストラ

川邉義雄

甚平の父と息子の揃いぶみ
夏座敷セピア色した父が好き
蟻の列直線上に留守の家

掛谷弘史

秋風にこがねの稲穂波たちて
 凛とそびえし吾が住む園は

町田たけ子

わが蒔きし秋の七草おみなえし
 特養の園を黄に染めあげし

家光の竜宮門をくぐり行く
 肩に秋日の燦燦と降る

一徹の夫との来し方四十余年
 孫抱きつつ自す和めり平成18年

野村節子

平成18年春の作品

ひらかれし家運と孫とひなまつり
元気よくうたう園児や桃の花
店先にすしのにほふやひなまつり

吉田きみ

なんとなく心弾みて春の庭
どこゆくも花菜明かりに誘はるる

古山清美

春寒の飛行機雲の帯白し
日めくりをめくりめくりて春を待つ
琴の音の流るる桜祭かな

岡本富江

裏山に鶯鳴けり通夜の朝
新品の制服そろへ春を待つ
浮き浮きと桜開花の知らせ待つ

清水和江

登校のいつも小走り一年生
ことごとく風に震へて犬ふぐり
しばらくは香いただき桜餅

柴崎加代子

入学の祝携へ孫問はむ
大空を差す園庭の牡丹の芽
梅咲くや面会増えて特養棟

野村節子

ひともとの梅の放ちしかをりかな
水温む川面に野鳥遊びをり

小林芳雄

春雷を見上げて母の背にかくれ
陽光を浴びて子猫の伸びひとつ

桐谷ふじ子

闇に浮く工事のランプ冴返る
ひとつ咲きたちまち盛り白木蓮
名苑に生まれ育ちて囀れり

今成公江