「知る・知っている」とは – Web教育学級 1

Web教育学級

「知る・知っている」とはどういうことか それについての理解はどのように発達するのか

お茶の水女子大学人間文化研究科・理論学術振興会特別研究員 齋藤瑞恵

平成13年6月

鷲宮保育園の皆様、先日はお忙しい中調査にご協力いただき誠にありがとうございました。おかげさまで調査結果の分析が終了いたしましたのでご報告致します。

調査の目的

「知る・知っている」とはどういうことか、それについての理解はどのように発達するのか、ということは心理学の分野だけでなく哲学の分野などでも長い間の関心事でした。

しかし、この問題を直接的に検討した研究はこれまでごくわずかでした。

また、実際に何かを知ろうとしたときにとるべき方法について理解することは、能動的に世界にかかわり、知識を吸収していくためにも非常に重要なことだと考えられます。しかし、この点についても、やはり幼児期を対象とした研究はこれまでごくわずかでした。

そこで、今回の調査は主に3つの点を検討することを目的としました。

「知る・知っている」ということについて、幼児はどのように理解しているか。
実際に何かを知ろうとするときに、どのようにしたらよいのかを幼児は理解しているか。
「知る・知っている」ということについての理解と、実際に何かを知ろうとするときのよりよい方法についての理解は、関連するのだろうか。

調査の方法

上記の目的のため、調査は次のように行いました。

  • 調査対象
    生活年齢3歳、4歳、5歳、6歳の園児の皆様
  • 調査方法
    「知る・知っている」ということの理解
    絵カードを示しながら、短いストーリーを聞いていただきました。

SD34_18「キツネさんとタヌキさんは二人で森の中を歩いていました。
タヌキさんはおめめをケガしていたので周りがよく見えませんでした。
だからキツネさんがタヌキさんのおててを引いて歩いてあげました。
しばらく二人が森の中を歩いていくと、この前来たときにはなかった新しいおうちがありました。
キツネさんは新しいおうちを見ました。
タヌキさんはおめめをケガしていたので新しいおうちは見ませんでした。」

というお話しを聞いていただいたあと、
「新しいお家を知っているのはキツネさんかな? タヌキさんかな? それとも両方かな?」
とたずねます。

そして「キツネさん(もしくはタヌキさん)が新しいお家の事を知っているって○○ちゃん(園児さんのお名前)はどうして分かったの?」 と判断の理由を教えていただきました。

実際に何かを知ろうとするときの方法についての理解

絵カードを示しながら、まず何か新しい事柄について園児さんが知りたいと思うとき、どのようにするかをうかがいました。(自由回答)

例えばハシドイ(植物の一種)の絵を示し
「これはハシドイっていうんだって。○○ちゃん(園児さんのお名前)がハシドイのことをもっともっと知りたいって思うとき、○○ちゃんだったらどうする?」
と質問しました。

その後何かを知りたいときの方法として2つずつ示し、どちらの方がよりよい方法かを選んでいただきました。(選択)

例えば「○○ちゃんがハシドイのこともっともっと知りたいと思うとき、○○ちゃんだったら何回も何回も見に行く? それとも一回だけ見に行く?」 というように質問し、その後「どうして何回も何回も(もしくは一回だけ)見に行くの?」 と判断の理由を教えていただきました。

結果

1.「知る・知っている」ということの理解(図1)

年齢が上がるにつれ「知る・知っている」ということについての理解は進んでいくことが示されました。

図1「知る・知っている」ということについての理解 平均得点

2.実際に何かを知ろうとするときの方法についての理解

自由回答(図2)何かを知ろうとするときの方法について年齢とともに自発的な回答、洗練された回答が増えることが明らかになりました。

図2 自由回答平均得点

図2 自由回答平均得点

またそれぞれの園児さんがどのような回答をする傾向があるのかをまとめたところ(図3)年齢とともに何らかの妥当な回答、より洗練された回答ともに増えることが明らかになりました。

図3 自由回答 回答パターン

図3 自由回答 回答パターン

選択(図4)何かを知ろうとするときの方法について、2つの選択肢の中からよりよい方法を選んで頂いた場合でも、年齢とともに、よりよい方法を選べるようになることが明らかになりました。

図4 選択 平均得点

図4 選択 平均得点

3.「知る・知っている」ということについての理解と実際に何かを知ろうとするときのよりよい方法についての理解の関連

月齢などの影響を取り除いた後でも「知る・知っている」ということの理解と実際に何かを知ろうとするときのよりよい方法についての理解とは関連があることが明らかとなりました。すなわち年齢などに関係なく「知る・知っている」ということについてよりよく理解している園児さんは、実際に何かを知ろうとするときに自発的に方法を回答することができ、選択肢の中からよりよい方法を選ぶことができることが分かりました。

- 最後に -

SD14_15今回鷲宮保育園の教職員の皆様、園児の皆様、ご父兄の皆様のご協力により調査を実施することができました。心より御礼申し上げます。
調査の内容、分析結果の内容などについてご質問ご意見がありましたらぜひお聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。
なお以上の分析結果は学会誌「発達心理学研究」に投稿するため準備を進めております。